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「…僕」
「うん」
「今週は掃除当番なんです」
「うん」
「だから、少し遅れてしまうかもしれませんけど…」
「………」
「今日は、古書室に顔をだしますね」
「…ほんとに?」
「本当に」
「じゃあ…」
四月一日先輩は、言葉の代わりに右手の小指をたてて、僕の顔の真ん前に突き出してきた。“恥ずかしい”…。怒っているのか、嬉しいのか、疑っているのか。なんとも複雑な、桃色の頬で見つめられて。僕は彼女の小指に、自身の小指を絡めた。すると、つい今までの表情が嘘のように、四月一日先輩はその大きな黒目を輝かせて、歌うように口ずさむのだ。
「ゆーびきりげーんまん。嘘、吐いたら針千本のーます。指、きった!」
離れる指と指。その間をすり抜けていく温もり。僕はつられて微笑う。だって、四月一日先輩がとても嬉しそうに、満足そうに__
笑ったから。
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