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目の前に起きていることが真実かどうか判別がつかなかったけれど、タンスの奥底にしまってあったコートやマフラーを引っ張り出して、とりあえず身につける。
こんな日にじっとしていられるわけがなかった。相棒のカメラを首にかけ、家を飛び出す。
雪が降り積もった歩道をスニーカーで走り抜けて行く。急ぐ理由もなかったが、はやくこの街の一番良い場所で写真を撮りたかった。
15分ほど歩いて、坂道の入り口にさしかかる。そこを登りきると、この街を一番見渡せる丘だ。秘密の場所である。
夏の雪景色はありえないが故に、ひどく心を奪われた。色とりどりの屋根に積もった雪が、太陽の光を反射して薄く光る。
ファインダーを覗き込んで、必死に写真を撮る。自分の目に映った一瞬一瞬が、すくい取られて、カメラを通し永遠に残る。
こんな特別な日を残さないという選択肢がなかった。季節外れの雪に、魅了されていた。
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