ある夏の日の魔法

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ある夏の日の魔法

人生には少し信じられなくて、でも不思議で一生忘れられない日があってもいいと思う。 これは、私が過ごしたある夏の日の思い出。 肌に冷たい空気を感じた。 張り詰めた朝。動く音さえ憚られるような静寂。 いつもなら、蝉の声で目がさめるのに。 薄い布団をはがして、枕元のメガネを手探りで探しながら、ゆっくりと体を起こす。 何かがおかしい。 そう思って、半袖のパジャマのまま、ベッド脇の窓を勢いよく開けると、季節外れの冷気が部屋の中に吹き込んできた。 A「何これ…」 思わず、窓から身を乗り出す。それは、目を疑うような光景だった。 家から見える世界が、一面雪で白くコーティングされているのだ。 今もしとしとと雪が絶え間なく降り注いで、道路や窓の黒いサンを白く染め抜いている。 夢……? 思わず、部屋にかけてあるカレンダーを見る。 今日は8月31日だった。
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