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「なあ、俺とねんごろにならないか?」
腰高サイズのフェンス越しに、そんな言葉を掛ける亮(りょう)の声は、心無しか震えていた。
吹き付けるビル風が、短く刈り込んだその黒髪を、僅かながらにサラサラと揺らしている。
「えっ?」
亮に突然そんな言葉を掛けられた恵理(えり)は一瞬驚きの表情を浮かべるも、すぐ様、自身の動揺をカモフラージュするかのように、冷やかな嘲笑で打ち消した。
彼女も亮と同じく社会人としては一年生。真新しかったスーツも、11月を迎えた今日この頃、漸く東京の夜景に馴染んで来たところだ。
一方、そんな戸惑いの表情を浮かべる恵理を目の当たりにした亮はと言うと、
「だから・・・」
そこまで声を出し掛けて、思わず言葉を詰まらせてしまう。
どうやら彼は、頭の中で懺悔を始めたようだ。
『東京へ行って二人で幸せになろう』
そう誓い合ってこの地へやって来た筈なのに......
俺がバカだったのは認める。
都会に来て、ついつい浮かれちまったんだ。
俺の事を許せない!
そりゃあ、そうだよな......
お前に対して、あんな酷い仕打ちをしちまったんだから......
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