『楽園』

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『楽園』

 小さい頃から冒険に憧れていた。主人公が仲間達とあらゆる困難に立ち向かう姿に心惹かれていた。いつかは僕も。14歳になってもその夢は崩れることなく、膨らんでいく一方だった。  壁に囲まれた直径5キロメーターの小さな国。それが僕の世界だった。事故や事件・トラブルなどが一切なく、世界中で一番平和な国と言われている。  この国は世界中からの観光客が耐えない。ここにはトラブルをもちこんではいけないというルールが観光客の中であるためか、今までに問題を起こした観光客はいない。  中でも、『四季の花園』はこの国きっての観光スポットである。四季とりどりの花が一斉に咲いている施設で、花園の中心にある高さ120センチ・直径100センチの小さな塔の窓から顔を覗かせるのは、目立ちたがり屋の花たちがこれでもかというほど花びらを開かせている。     あえて言おう。僕はこの国を出たいと思う。ここは僕には平和すぎる。   世界中の誰もが憧れるこの国を。  『楽園』を。
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