楽園と帝国

そして冒険（奴隷生活）へ

「光一は頭がいいからどこに言っても大丈夫だよな。俺なんか個人面談で、進学は無理だから就職しなさいって言われてるし。将来の夢もへったくれもあったもんじゃないよ」

「ははは」

笑えねー。

僕が『楽園』を出るときがきたら、きっと名前も知らないこいつも僕のことを嘲笑うんだろう。自分より劣っているやつに笑われるのは癪に触るが、その時は僕の大きな心で許してやろうじゃないか。

　今日話してみるか。空から言葉が降りてきたみたいに突然思った。もうこの機会に両親に打ち明けてしまおう。そう思ったらなんだか体がフッと楽になった。

　とりあえず、作文には公務員と適当に書いておけば問題ないだろう。それで教師は満足する。所詮上に報告するための資料でしかないのだから。

　学校が終わり、家に帰るための足は鉛のように重かった。一体さっきの体の軽さはなんだったんだろうと不思議に思う。一歩一歩足を踏み出しているものの、まるで自分がロボットになったかのように動きが硬い。自分にかかる重力が普段の倍になったかと思うほどに。

　頭の中がごちゃごちゃしている。両親に話せば今までのような生活には戻らないだろう。家族という関係が崩れてしまう。母はなんと言うだろう。父は起こるだろう。殴られるかもしれない。僕は今日ほど家に帰りたくない日はなかった。