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ある日突然、彼女が私に言った。
「私の絵を、褒めてくれる人がいる」
「良かったじゃない。どんな人なの」
彼女は、口ごもった。珍しく、照れているようだった。
「男の人」
私は驚き、そして喜んだ。
「やったわね!」
彼女は、はにかんでいた。そんな彼女を見るのは初めてだった。
「きっといい人よ。付き合っちゃいなさいよ」
私は無責任にそう勧めた。
「でも……私、経験ないから……」
「ないから付き合うのよ! 決まってるでしょ」
彼女は、私を見て言った。
「そう?」
私は断固として答えた。
「そうよ!」
そうして、彼女は付き合い始めた。彼は、彼女のことが大好きらしかった。
そして彼女の絵のことも。それを聞くと、少し心が痛かった。嫉妬なのかな?
とにかく、彼女の表情はどんどん明るくなっていった。私も嬉しかった。
彼女の絵も、日に日に明るい色合いを帯びてきた。
嬉しいけれど、彼が彼女の絵を明るくした、と思うと、少しくやしい。やっぱり、嫉妬みたい。
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