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「──いやいやいや、がっつり大嘘ついてんじゃーん。百井センセってば最低っ!」
聖は笑いながら僕の罪悪感にトドメを刺そうとする。
「でも、僕たち付き合ってはいないだろ?」
「そーですねぇ」
「一緒に住んではいるけど、もうすぐ結婚しないだろ?」
「でしょうねぇ。オレは財力無し、モモは生活力無し。かなりお似合いだけど、これ以上どうこうって考えらんねーもんなー」
リンゴの皮をくるくるとむいている彼は、唇をとがらせてゴキゲンに口笛を吹き出した。
軽快なウェディングソング。
曲がピープーと盛り上がっても手先は少しもとまらず、狂うことがない。
皮も途切れることなく祝福の紙テープのごとく長く長く続いていく。
きっと厚みも均等だろう。完璧だ。
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