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4「どうしますか先生。ぼくはまだ続けてもいいですよ?」
「先生は……嘘つきです」
寝不足気味でぼんやりしていた僕は、なにを言われたのか理解できなかった。
耳の奥にかろうじて引っかかった『嘘つき』もなんのことを指しているのか分からない。
だんだんと意識が鮮明になっていく。
今は──授業中だ。
すぐ隣に"彼"がいる。
五人用の教室に二人きり。
うちの塾の個別指導授業は、本来ならば、パーテーションで仕切った簡易的な個室で行う。
けれど、“彼”は雑音があると気が散りやすいらしく、トクベツに教室を貸し切っているのだ。
二人きり。
その気になれば授業以外のこともできる。
だめだ。
なにを考えてるんだ、僕は。
まだ完全に寝ぼけてる。
「先生? 聞こえてます?」
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