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タメ口は無理だとしても、あだ名で呼ばれるぐらいはしてみたい。
せめて“モモ先生”ぐらいで呼んでほしい。
「そういう青葉くんは今日なに食べたのかな?」
百井の井、たった一文字の省略のために僕はあの手この手で接近を試みる。
「えっ……!? ……うっ」
僕の思いとは裏腹に、それまでとても悠々として饒舌だった青葉は急に黙り込んでしまった。
どんな問題も瞬発的に答えられる明晰な頭脳を持っているのに、自分自身のことを話すのはとても苦手らしい。
たぶん、小さな頃からものすごく良い子で、親や周りの大人の言うことをよく聞いて──あまりにも聞きすぎて──自分自身の気持ちをことばにする機会がほとんどなかったのだろう。
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