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 オレは某大学の構内にいました。再来週に控えた産学官連携イベントの打ち合わせが行われると聞きつけたのです。会議に用いられている講義室の辺りをうろつきながら、さてどうしたものかと思案中です。  先日のヤカラたちはどうやらこのイベントでなにかをしでかそうと企んでいるようです。オレはそれをイベント関係者に伝えなければならないと思い、こうして大学に参じたわけです。オレと彼女の素敵な時間を邪魔した償いはしてもらわねばなりません。お返しに奴らの企みも邪魔して差し上げますよ。  窓から講義室の様子をうかがうと清潔感のある襟付きのシャツを着たオッサンたちと思い思いの自己表現を成す服装の学生たちが机を並べ、向き合い、イベントの詳細を煮詰めているところでした。  地方都市の活性化を目的とした本イベントは市民のネットワーク形成や新たな産業活動の展開を促進するための行政肝いりの催しだそうで、オレはそれの重要性の半分も理解はできていませんが、なにやら意義のあるものであると聞き及んでいます。  会議は始終良い雰囲気だったかと思います。というのも、オレは学生の一人に気を取られてあまり話を聞いていなかったから会議のそのものにはてんで無関心だったからです。その学生はもちろんあのお嬢さんです。白いブラウスにきらきらした紺色のカーディガンを羽織り、素敵な笑顔を惜しげなくふりまいておりました。オレと会うときはたいてい長い髪を下ろしているのですが、今はそれをきれいにまとめ上げています。オレにはお嬢さんだけが周りの学生やオッサンたちとはまるで違う存在に見えます。  そうです。お嬢さんはイベントの関係者なのです。オレがこのイベントの存在を知っていたのもお嬢さんから聞いていたからです。
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