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 なんだか地面がふかふかしているなと思いながらふらふらと夜道を歩いております。学生街の居酒屋はたいてい鶏肉しかないし味は並みだが、安いのです。わけのわからないアルコールを水やら炭酸で薄めたチューハイ(たぶん)で肉を流し、また食べるを繰り返しました。ひとりでカウンター席に座っていると居酒屋の大将が話しかけてきたりします。でっぷりと太った中年の男は狭い厨房をより狭くしていました。どこかでみたような、どこにでもいるようなこの男は慣れた手つきで鶏肉を油に投げ込みながら「最近の若者はしょうむない」とうっとうしく絡んできたりします。  しばらく歩いているとあの非常階段にたどり着きました。今日はお嬢さんとは会う予定はなかったのですが、いつの間にかこちらに足を向けていたようです。習慣とはおそろしいものですね。階段に座り込み、オリオン座を探していると拡張された血管から熱が放出されるのがじんと感じられます。少々飲みがはかどったようですね。 空を眺めるのに飽きて、目線を下げると階段の隅、外壁と階段をつなぐボルトの隙間に薄い桃色の便箋が差し込まれているのが目につきました。身体を壁の方に大きく倒しながら便箋に手を伸ばしました。
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