プロローグ

2/7
前へ
/135ページ
次へ
          出会い    彼は天才だった。  けれど、勉強は出来なかった。  学校ではいつも馬鹿にされる程だった。    彼はセンスがあった。  けれど、芸術に不得手だった。  絵を描かせても歌を歌わせても結局うまくはならなかった。    彼は素人だった。  けれど、玄人にも負けなかった。  二十一年生きてきた彼は、川と並行して走る薄汚れた高架橋下で偶然目撃した殺人を、恐怖を覚える事もなく眺めることが出来ていた。    だから彼は ―― だった。     ♀+♂    七月の後半。  天月天(あまつき そら)はその日、午前四時頃に夜間工事の仕事を終えて、帰路に着いていた。
/135ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加