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少年(M) 「二人は僕を置いて、遠くへいってしまった。でもそれでいいとも思う。殻の中に籠ったままの方が安全だ。外にはつまらなくて、くださらない現実しかない。夢を見続けられるのなら、きっと眠ったままの方が幸せなんだと思うから。
少年、階段を上っていく。
ビルの屋上、夕陽に向かい合うような位置まで歩き、手すりに身を預ける。
少年(M) 「ここで死んでしまうのもいいかもしれない。きっと何もかもが手遅れで、いつまで続くかわからない不幸の連続だけが僕を待っている。身の回りにある全てを呪いながら生き長らえるくらいなら、こんなに苦しい思いをするくらいなら、いっそ。僕を見ている夕陽を見つめていたら、そんなことを思うようになった。それ以来、僕は毎日この場所に通っている」
オジサンの口元だけを映す。
オジサン 「君さぁ」
オジサンの顔が見えない左脇から少年を映す。
少年、弾かれるように振り返る。
少年の後ろから左にカメラがゆっくり移動し、オジサンが映る。
オジサン、頭をポリポリかきながら少年の方へ歩いてくる。
オジサン 「いっつもここにいるけど、用がないならこの場所、譲ってくれないかな。オジサンここお気に入りなんだよね」
オジサン台詞を言ってから少年の隣まで歩き、溜め息を吐きながら夕陽を見つめる。
少年 「す、すみません……」
少年、オジサンに向かって頭を下げる。
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