悪い虫

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薫くんは怖い顔のままため息をついた。 「咲子、ほんっとに一人になるなよ。ったく、翔太は何やってんだ」 「翔太くんは関係ない」 「いや、翔太は俺の弟だから」 薫くんは本当の弟みたいに可愛がってる感があるし、浅野君はもはや崇拝してる。 だからって、小間使いのようにして良い訳がない。 「咲子、男を甘く見てんじゃないのか? 誰もいない保健室なんて、危険でしかないだろ? もし押さえつけられたら、どうすんだよ」 そんなことないって言えなかった。 悔しいけど、当たってるし、知ってるよ。 唇を噛みしめて、熱くなる瞼を誤魔化した。 薫くんの言う通りだ。 「ごめん、言い過ぎた」 ふわって抱きしめられて、泣けてきた。 「ごめんなさい、彼氏いるってちゃんと言ったのに」 「泣くなよ。あんなヤツにそそのかされたのは俺の方だ。ごめんな。ったく腹立つな。保健室とかなんなんだよ」
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