悪い虫

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え、階級って。 思い出したのは薫くんのお見合い話。 何度も耳にして覚えてしまった。 「薫くんは警部、だよね。えっと、警視艦?」 「おっ、いいとこいってるけど、正解は警視。署長だから、上司に違いはないんだけど、俺の親父も警察官って知ってるよな? 親父は、警視艦なんだ。で、一木署長の上司だったことがある」 「ん? 署長さんの上司だった人が薫くんのお父さんだったんだ」 「そ、一時だったらしいけど、今回の異動で一木さんは署長になったんだ。なんでも親父が口添えしたらしい。ようするに、一木署長は俺に強く言えないってこと。いやらしい話だけどな。で、だ。牧が崎署で一番の高学歴は誰?」 「あ、それは薫くんだ。だって東大より上ってないよね?」 「まあ、牧ヵ崎署でいえばそういうこと。な? 咲子が心配するような事は何もないし、俺が肩身の狭い思いなんてしないんだよ」 へぇぇ、縦社会恐るべし。 でも、薫くんがいつも余裕そうに見えるのは、それだけ努力してきたからだ。 だから、誰にも何も言わせないオーラがある。 親の権力を当てにして、大きな顔をしている人とは全然違う。
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