悪い虫

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一木君は何も話さず、保健室についてしまった。 ガラッ 養護の先生は不在のようだ。 ノートに具合を記入しなくてはならないが、とりあえず頭痛がすると書いておいた。 一木君は誰もいない保健室の、奥のベッドのカーテンをシャッと開けて、そこへ腰かけた。 仕方なく、隣へ座る。 先生早く来てくれないかな。 「葛城さん、彼氏ってどんな人?」 「えっと、あの、なんで?」 一木君なんか怒ってる? 「なんでって、気になるから」 私が誰と付き合おうが、気にしなくていいのに。 なんとなく、嫌な予感がする。 面倒なことになりそうな気がして、素直に答えることにした。 「彼は、年上で、俺様なところもあるけど、優しい人。勉強も教えてくれるし、浅野君と美樹とも仲いいよ」 薫くんを思い出すとにやけてしまいそうだ。 いつもかわいいってキスしてくれる。 さらっと揺れる前髪も、大きな手も、真っ直ぐに見てくれる瞳も。
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