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姫王子とは結婚できない
ジェール王国に立ち寄ったら、突然城に招かれた。
『勇者ハル・ロックス。そなたに1つ提案がある』
そして。王様にそう切り出され、突然、何の縁もないジェール王国の姫を嫁にもらうことになったのだ。
いやいや、とんでもない話だ。
謁見の間を後にしたハルは、天井の高い廊下の端に寄ると、影のようについてきた姫をまじまじと見た。今さっき王に紹介されたばかりの彼女は、淡い水色のドレスに身を包んでいて、長い金髪と宝石のような青い瞳を持った気品のある容姿をしている。ハルみたいな、艶のない焦げ茶髪の小汚い旅人には、不釣り合いもいいところだ。ハルは少し緊張を覚えながら話しかけた。
「あの、陛下につい押し切られてしまいましたが、姫様にはもっとふさわしい方がいると思うんです。貴方からお父上を説得して下さいませんか?」
「断る」
初めて聞いた姫の声は、予想外に低くて高圧的だった。
「私が相手では不服か?」
「そういう訳では……ところで、声低いですね?」
「女ではないからな」
「なるほど……え?」
聞き間違いではないらしい。事情は分からないが、ハルの突然の結婚相手は、何と姫の格好をした王子だった。
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