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「この者はジェール王家の婿として極めて不適切です。よって、私の方からお断りいたします」
昨日に続いての謁見の間。王や兄王子達の前で、クオート王子は堂々とそう申し出た。その姿に、胸がいつかのようにギクッとする。
赤い絨毯の広間を貫く石材の床の先、一段高くなった場所に座した王は、厳かな眼差しで王子を見た。
「クオート。それがそなたの決断なのだな?」
「処分はいかようにも」
王は愉快そうに笑った。
「よいよい、構わん。今回のことは冗談だ」
「「えっ」」
ハルと王子は同時に声を上げた。
「見聞の広い勇者殿と接することで、そなたも成長してくれるのではないかと思ってな」
変わり者の王も「壊し屋」の息子を持て余していたということか。いや、暗殺のことを含め半分は本気だったのではないか、とハルは推察した。ま、あっさり殺されるほど呪われた勇者は軟弱でもお人好しでもないが。
唖然としている王子の横で、低頭したハルは、一日振り回された不満を込めて言ってやった。
「結婚については、少々難しい部分もありましたが、愛人にだったら喜んでなりますよ」
一同が固まる。こちらを凝視する王子はもちろん、結婚を提案した王でさえ驚いたようだった。
「冗談のお返しです」
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