再会

1/3
3人が本棚に入れています
本棚に追加
/447ページ

再会

深夜の森の奥から男が一人、川の橋まで歩いて来た。橋の向こう側には朽ちかけた宿屋が一軒あるのみだった。夕方からの豪雨で川の水かさは増して、橋のすぐ下まできていた。 男は迷わず宿屋に向かった。見た目はただのオンボロの小屋にしか見えない。ドアのペンキは剥がれ落ち、もともとの色は何色だったかわからなかった。錆びたノッカーを3度たたいた。 コツッコツッコツッ。 中は薄暗く窓も汚れているので、中の様子はうかがえないが、人影が映った。 「こんな時間に誰だい?今日は満室だよ、他をあたりな!」 しわがれた声からすると、老婆らしい。こんな朽ちかけた宿屋が満室などありえない。客を追い返す手だ。男は、もう一度ノッカーをたたいた。今度は、1度だけ、コツッ。 何年も開けてないような鍵の音がした。ギギギィ。 扉がわずかに開いた。薄明かりが川岸の道に細く伸びた。顔を出した老婆は、背が低く、髪の毛は真っ白な白髪頭を後ろでまとめてあった。男の顔を見ようと上目遣いに目をあげた。驚いて、半分まぶたにおおわれてた目が大きくなった。 「まさか…まさか…」扉を大きく開きながらつぶやいた。扉のきしむ音でしわがれた声が男に届いたか、わからない。     
/447ページ

最初のコメントを投稿しよう!