1996 アユムとアサミ

1/1
前へ
/18ページ
次へ

1996 アユムとアサミ

 都会の絶望の果てで出会った、孤独なホステス・砂田まりあ(鈴木保奈美)と孤独な天才ピアニスト・高村士郎(三上博史)の究極の愛を描いた悲劇。オープニングとエンディングは士郎がまりあに語りかける形でナレーションが入る。メインキャスト全員が孤独であり、悲しい過去、心の傷をかかえており、この枠としては珍しい重厚な人間ドラマが描かれている。  尾崎豊のオーマイリトルガールは『この世の果て』の主題歌だった。  アサミはカヨのことなんかどうでもよかった。  アユムとずっと一緒にいたい。 「カヨちゃんの法事いかなくていいの?」 「アユム、法事ってお金かかるよね?」  最近、処女を捨てた。 「でも?大切な友達だったんだろ?」  アユムの家のコタツの中でヌクヌクとしていた。  遊びに行くときにママから『早く帰って来るのよ?』って言われた。  ポケベルなんか持ったらもっとうるさくなる。  気持ちいいことたくさんしたいんだ。 「うん」 「ポケベルくらい買ってもらえよ?ピュアしたい」 「アユムはドラマの見過ぎ」  和久井映見主演のLove Storyだ。  サヴァン症候群の少女を演じてる。  アサミはあんまり見てないから内容はよく分からない。 「もしアレだったら買ってあげようか?」 「ホントに?でも悪いなぁ」  最近じゃガッコーの友達もミンナ持ち始めてる。 《イマドキ、アサミだけだよ?》 《まっ、君じゃ無理だよね?親がアレだから?》 《ハハハハ………》  受話器の向こうからイロイロ言われた。  アサミの父親はリストラに遭った。  バブルのせいだ。  母親は夜の仕事に出るようになった。 「やっぱ、必要ないや」  ポケベルなんて持ったら今以上にミンナからやられる。 「遠慮すんなって?俺をお兄ちゃんだと思えばいいんだ。金なら心配いらない」 「親がしつこくなるかも?そしたらデートも出来なくなる」 「それもそうだな?」  目覚し時計を見たら7時を過ぎていた。 「マズい、ママに叱られる」 「次、いつ会える?」
/18ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加