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薔薇から現れた悪魔を美しいと、真弥は束の間思った。
司と同じ、茶色がかった髪に、漆黒の瞳。
雪のように白い肌が、整った顔立ちを引き立たせていた。
だが、恐ろしく冷たく、情のない目をしていた。
見ていると、心が芯から凍るほど。
「なぜこのようなことを」
長老が問う。薔薇の悪魔は何も答えない。村を見渡し、目を細めただけだ。
「なんとか言えよっ」
怒り猛る怜生が悪魔に飛び掛った。
悪魔は右手を差し出し、何か呟いた。
怜生の動きが止まる。
時間が止まったのかと、真弥は思う。
しかし、そうではなかった。怜生の身体が静かに崩れ落ちる。あっという間の出来事だった。
倒れている兄の元へ駆けつけたかったが、抜けた兄の分まで結界に力を注いでいた真弥は、一歩も動けず、歯を食いしばるだけだった。
「お前らが江梨花を苦しめた」
悪魔が両手を天に掲げる。悪魔の頭上で、空気が渦巻いている。
次第に、火花が散り、渦巻く大気は炎の塊となっていった。揺らめき輝く火球が、司を赤く照らす。
「お前達に生きる価値はない」
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