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真弥が口を噤む。涙が目に浮かぶ。彼女の必死さを、翔は感じ取った。そして、シンの迷いも。
「シン、やめろ。お前の心は決まってるはずだ。司へ行こう」
シンが翔を見つめる。戸惑ったような表情だった。
「翔さんは、買いかぶりすぎです」
シンが立ち上がり、真弥を見下ろす。射るような視線。悪寒が走る。
「あなたが最優先すべきことは、裏切り者の沙貴の抹殺でしょう。そのために、私達を囮にすればいい」
シンのこめかみが痙攣した。眉間に皺を寄せ、真弥を睨みつける。
「囮扱いしようとしているのはそちらでしょう」
真弥の声は震えている。恐怖を押し殺し、勇気を振り絞っている。シンは彼女に一歩近づいた。
「カイを覗くとは、司は趣味が悪い」
シンが手を伸ばす。真弥は困惑しながら、その手を取った。シンは力をいれ、真弥を立ち上がらせる。
「行きましょう。司へ」
「そうこなくちゃ」
翔も立ち上がり、二人の後をついていく。その顔は、浮かない。
裏切り者の沙貴の抹殺。真弥の言葉を反芻する。
沙貴とは一体どんな人物なのか。
何故司を襲ったのか。
どうして、シンをおびき出そうとしているのか。
シンの心からは、何も読み取れない。
翔の寂しさを労わるように、森が優しく揺れた。
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