第四章

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 川辺の移動陣へと着くと、シンは目的地の座標を割り出すために、真弥に村の場所を尋ねた。その答えを聞き、顔が曇る。 「カイの村から、目と鼻の距離ですね。灯台下暗し、というやつですか」  カイの村。翔は目を光らせた。司の村を訪ねた後、シンと共に帰ろう。シンの喜ぶ顔が目に浮かび、心が躍る。 「では、行きます」  三人は移動陣に乗る。激しい揺れが襲う。近いからか、翔が吐き気を催す前に、目的地に着いた。山に囲まれた、空気の美しい土地が広がっている。 「村まで結構距離があるわ。険しい山道だから、へばったら下山していいのよすぐに、あんたはね」  真弥に睨まれ、翔はまたシンの背後に隠れる。だから、シンの胸で覚悟の石が赤く光ったことに気づかなかった。  村は山奥にあるという話だったが、山の中へ入るまでもかなりの距離があるようだった。  この距離を歩いてシンのところまで向かおうとしていたとは。翔は真弥の根性に舌を巻く。  麓には、いくつか村があった。田舎で、自然以外何もない。  翔は末長家を思い出す。別れた両親と姉。元気にしているだろうか。帰ろうと思えばいつでも帰れたが、翔は帰るつもりはなかった。だが、突然いなくなり心配をかけているだろうと思うと、少し、申し訳ない気持ちになる。  二つの村を通り過ぎ、三つ目の村が見えてきた時、翔は悪寒を感じた。  ソロンに支配された患者を相対する時感じる寒気。  それは、ソロン独特の負のオーラだとシンが教えてくれた。  村にソロンに支配された患者がいる。自分が気づいているはずだから、シンはとっくに気付いているだろう。
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