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石が、赤く光る。真っ赤に光輝いている。
突如苦痛に顔を歪めたシンが倒れ込んだ。思わず翔は駆け寄ってしまう。驚くシンを無視し、上着を開く。
胸の傷から、血が出ていた。
「大丈夫ですよ。何でもないんです」
翔から離れ、シンは上着で傷を隠す。どうして隠そうとするのか、翔は怒りを覚えた。
「お前、何隠してんだよ。吐けよ。俺じゃ頼りねえかもしれないけど、吐けば少しは楽になるだろ」
「え、何のことですか」
目を逸らすシンの顔を掴み、翔は強引に視線を合わせる。
「馬鹿野郎。いつもみたいに演技ができねえほど、弱ってるじゃねえか」
動きを封じられたシンは、逃げ場を探して視線を泳がせ、逃げ場がないことを知り、ただ怯えた表情で翔を見つめた。
「言えよ。言えるとこだけでいいから」
シンの瞳から、一筋の涙が零れる。
翔の前で、それは初めてのことだった。
「お母さん」
震え、擦れた声で、シンが言った。聞き逃すまいと、翔は集中する。
「お母さんなんです、陽子さんは。僕の、母親です。記憶は、僕が消しました」
シンの告白に、翔は驚き、彼を見つめる。
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