2人が本棚に入れています
本棚に追加
四つ葉
桜の花も散り、葉の青々さが力強く感じる。春が終わりを迎え少しずつ温かくなり、もうすぐ夏がやって来る。
地図研究部の部室では、部員がそれぞれ好きなように過ごしていた。その中であらたは、壁に貼られている活動目標を睨みつけていた。
「毎日、しっかりと学生生活を過ごし、心から笑って、泣いて、怒れるように
一日一日を大切に生きること」
その横にはみずきが墨で書いた「一日一ハッピー」という文字も貼られていた。
なんだこれ。部活動に何がどう関係しているのか全く理解できない。地図を研究するんじゃないのかよ。全部みずきさんが考えそうなことだな。ばかばかしい。とあらたは心の中で文句を言っていた。
活動目標の下には模造紙で出来た大きな学内の地図が貼ってあり、「ハッピーマップ」と書かれてあった。あらたは前から気になっていたが、訊く機会が見つからなかった。そこに広海が隣にやって来た。
「部長、このハッピーマップって何ですか?」
「これはね、学校で幸せだと感じた場所を記しているんだよ。ほんの小さなことでもいい、あらたも幸せなことを見つけたら追加していいよ」
ふーん。とあらたはそれほど興味もなく地図を眺めた。貼ってある赤い丸シールに数字が書いてあり、横の凡例欄に数字の説明があった。
0番は桜の古木、裏山のあそこのことか。階段の踊り場、絵の迫力がすごい。用務員室、二人のおじさんが面白い。校庭の一角の四つ葉。
すげぇくだらないことが書かれているなと思っていると、部室にもシールが貼ってあり凡例には地図研究部設立!と書かれてあった。
「このマップっていつからあるんですか?」
「俺たちが1年の時に作ったんだよ」
「じゃあ、この部活もみずきさんと二人で作ったんですか?」
あらたの質問に広海の瞳が揺れた。答えに詰まっていると、窓の外を眺めていたみずきが振り返り部員全員に告げた。
「四つ葉探しするぞ!」
最初のコメントを投稿しよう!