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「ほら、あらた」
みずきがあらたの前に座り、手にした四つ葉のクローバーを差し出した。
「いりません。俺に情けをかけないでください」あらたはふいっと顔を背けた。
「あらた、知ってるか?幸せってのは『し合う』んだよ。相手とお互いに笑顔にし合う。オレとお前で『し合わせる』。そうするとな、2倍になるんだよ。だから、いいことや四つ葉のクローバーも分け合うんだ。相手にもいいことや笑顔が増えれば、自分も分けた分をもらったことになる」
みずきがなだめるように優しく笑った。
「そうだよ。今日、ここのみんなは互いに幸せを分け合った。幸せは一人だけでなく、互いに分かち合うものなんだよ」
須田があらたの頭を優しく撫でた。広海とゆらもその言葉に頷いた。
「そう……ですか」腑に落ちない表情であらたはみずきから四つ葉のクローバーを受け取った。
部員たちは天気の良さや四つ葉が見つかったこと、そんな今日は良い日だと話し、笑い合った。しげは受け取った四つ葉のクローバーを大切そうに持ち、眺めていた。あらたは物珍しそうに顔の前で四つ葉のクローバーを指でくるくると回していた。
「この四つ葉、どうしたらいいんですか?」あらたが尋ねた。
「これはね、栞にするんだよ。部室の本に挟んで、乾燥したら加工するの。みんなで一緒に作ろうね」ゆらが楽しそうに笑った。
しげはゆらにつられて笑い、あらたはゆらから目をそらし口を尖がらせて小さく頷いた。広海とみずきはその姿を嬉しそうに見つめた。
どうかこの四つ葉のクローバーが宝物になるように。この思い出が心を温めてふっと笑顔になるように。そう想いを込めて。
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