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「どうかな?イメージできた?」
「その話って」
ゆらさんのことですよね。と言葉を続けることができなかった。
彼女にも辛いことがあって、それをどうにもできない時があった。そんな時にどうしたらいいのか、彼女なりに伝えようとしている。その気持ちを無下にはできないとあらたは思った。
「白状します」
「うん」
「俺、活動目標のようになれないです。心から笑って、泣いて、怒るなんて。一日一日を大切に生きるってのも今まで考えたこともなくて。幸せも、俺にとって何が幸せかも分からない。それが苦しい」あらたはぎゅっと手を強く握った。
「それに、部長やみずきさんはいつも楽しそうに笑ってて、二人が居る場所に俺は居ない方がいいと思います。俺は二人とは違いすぎる」
「そうか、そんな風に思っていたんだね。あらたの気持ち分かるよ。私もそうだったし」
ゆらが思い出すようにふっと笑った。
「二人は活動目標を本当にしようと思ってる。幸せも、二人が3年間かけて見つけていってる。だから、あらたも急に二人みたいにならなくていい。幸せだってこれから見つけることができるよ」
「自信無いです」
「人と違うって良いことなんだよ。違うって気付いて、その違いを認めることで自分の心が豊かになっていくの。広海さんとみずきさん、二人と一緒にいるとこういう考え方があるんだって思えるの。新しい見方が出来て、自分の考え方も変わってくる。それってとても素敵なことなんだよ」
あらたはゆらの顔を見た。ゆらはいつもの元気な笑顔で頷いた。
「あらたは大丈夫だよ。違うって気付いているから。少しずつでも変わっていったら、分かることや分かる気持ちがあるから」
「そうだといいですけど」あらたは心が軽くなっているのを感じた。
「それに、二人はあらたを追い出すことは絶対にしないよ。むしろあらたの反応を楽しんでいるみたいだね。みずきさんが、めんこい仏頂面どこ行ったーって言ってたよ」
「なに?」あらたが眉間に皺を寄せて立ち上がった。
「あはは。それじゃ、部室行こっか」
あらたとゆらは部室に向かって歩き出した。あらたはこれから何に気付いて何を学べるのか、少しだけ楽しみな気持ちになっていた。
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