祭りと花火

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「そんなことより、みずきさんこそ、その柄何ですか?」  あらたがみずきの金魚柄の甚平を指さした。 「これか? 母ちゃんが作ってくれたんだ。金魚が良いだろー? それに、妹の浴衣とお揃いだ」 「妹さん何年生ですか?」しげは物珍しいようで輝いた目で尋ねた。 「小6だ」にっとみずきが笑った。  なるほど、とあらたは思った。みずきさんのあのハイテンションと反応、子どもみたいな考え方は妹がいるからか。きっと一緒になって騒いでいるに違いない。少しだけ、にやりとした。 「おい、あらた。今、失礼なこと考えてるだろ?」みずきがあらたを見上げた。 「まさか」 「その半笑いが証拠だ! オレのこと、子どもみたいだって思ってるだろ」 「そんなことは、まぁ」 「思ってるのか!」 「まぁまぁ、みずき落ち着いて。あらただって浮かれているんだよ」広海がみずきを捕まえて優しくなだめた。 「え」 「そうですよ! この半笑いだって、心が躍って仕方ないんですよ!」  しげが加勢してきて、あらたは、え!?としげの顔を見やった。 「んー、そうだな! あらたの笑顔は珍しいし、祭りで浮かれる気持ちに免じて、許してやる!」 「えぇー」がっくりと肩を落としてあらたはうなだれた。 「よっしゃ! これから地図研究部夏休み番外編が始まるわけだが。まず、ここで腹を膨らませて、花火大会に行くぞ!」みずきは仁王立ちで部員を見まわした。 「そして、大事なお約束だ! もしもメンバーとはぐれたら、公園の中央にある大地の人の像に集合な! 忘れるなよ!」部員は頷いた。 「それじゃ、出発!」  部員は祭り会場に入った。人であふれた狭い道を進んでいく。どの人も楽しそうで、笑い声と話し声、夏の熱気で一気に体温が上がっていった。
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