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「いえ、入部しに来ました」
「えぇ!?聞いてないぞ!」あらたがギョッとした表情でしげを見た。
「言ってないよ」しげはにやりとしてあらたに顔を向けた。
「よーし、それじゃあ部員紹介をしようか!」ぱんっと一つ手を打って広海が前に出た。
「俺は部長の3年、松田 宏臣(まつだ ひろおみ)。広海(ひろうみ)って呼んでな」
「そして、みずき」広海がみずきの肩に手を置いた。
「副部長で俺と同じ3年、高橋 瑞生(たかはし みずき)。みんなみずきって呼んでる」
「よろしく!」みずきがにっと笑ってみせた。
「最後に、紅一点のゆら」広海はゆらに前へ出るよう促した。ゆらは少し照れくさそうにしながら前に出てきた。ゆらは小柄で、肩につくくらいの髪を直しながら、くりくりとした目で二人を見上げた。
「2年の山崎 ゆら(やまざき ゆら)。俺たちはゆらって呼んでる」
「よろしくね」ゆらはとても心地の良い笑顔を見せた。
「俺たち地図研究部は、地図の歴史や役割、作り方の勉強をしている。地図には、その土地の過去や現在の情報だけでなく、人の歴史、人の想いが詰まっている。俺たちはそんな地図を読んで、土地や人の想いを知ろうとしている。その他に、自分が伝えたいこと、伝えたい想いを地図に込めて、自分の地図を作っている。」
広海は改めてしげとあらたに向き直った。
「自分が何を伝えたいのか、どんな想いで作るのか。自分が作ったその地図は宝物だ。だから俺は、君たちがどんな想いを込めて地図を作るのかとても楽しみだ」広海は嬉しそうに目を細めた。
「俺。帰る」
不機嫌そうにあらたは言い放ち、部室から出て行った。
「あいつ」しげが追いかけようとしたら、ゆらが制止してドアに向かった。
「私が行ってくるから、しげはここに居て」
「え、でも」
「いいから、いいから。ゆらなら大丈夫!ほら、座れよ」みずきがしげの背中を押して席に促した。
「はい」しげは心配そうにドアの窓に目を向けた。
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