祭りと花火

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 大地の人の像の所へ来てみると、あらたは居なかった。そこは祭り会場とは違い人も少なく、静かな場所だった。陽も落ちて、辺りは暗くなっていた。 「電話してみます」しげがあらたに電話するが、呼び出し音が聞こえるだけだった。発信を切り、首を横に振った。 「気付いていないんだろうな」 「あちこち動いていたら、もっと会えなくなるからここで待とう。俺とみずきで会場を探してみるから、ゆらとしげはここに居て」 「しげはゆらのボディガードな!」 「はい、分かりました」  広海とみずきはそれぞれ左右に分かれてあらたを探しに向かった。二人の姿が見えなくなり、辺りはしんとしていた。 「あの、ゆらさんって広海さんのこと好きですよね?」 「え!? あの、その、もちろん好きだけど、異性として好きって訳じゃないの」  突然の言葉にゆらは慌てて手をぶんぶんと振った。 「広海さんにはたくさん助けてもらって、もちろんみずきさんにもたくさん元気を分けてもらったの。私にとって二人は、お兄ちゃんみたいな存在なんだ。優しくて、温かくて、いつも見守っていてくれる、導いてくれる大好きな人たち」 「分かります。その気持ち」  ゆらとしげは顔を見合わせて笑った。 「私には、実のお兄ちゃんがいるんだけど、仲が良くないというか、話もしないんだ。大学に進学して家を出て行ったきり顔も見てないの。だからかな、余計に広海さんとみずきさんを憧れのお兄ちゃんみたいに思ってる。私が欲しかったものを二人に重ねてる」ゆらは遠い目をした。 「なんて、ね! えへへ!」わざとらしく笑うゆらを見て、しげは眉根を寄せた。 「だから、私は広海さんもみずきさんも好きだけど、恋愛感情は無いので! あー、変な汗かいちゃった」パタパタと手で顔を扇いだ。 「でも、時々」 「ん?」 「時々、二人は言葉にできないような寂しい顔をするの。どうしてかはわからないけど」 「そうですか」しげは二人が消えた方向をじっと見た。 「ゆらさんは、ゆらさんでいることが一番だと思います」 「私でいること?」 「はい」しげは静かに頷いた。  ゆらはしげが言ったことの意味がよく分からなかった。私でいることは何だろうと不安気に祭り会場を見つめた。
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