祭りと花火

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 須田の言葉にみんな目を丸くした。 「本当に!? すだっちも一緒ならもっと楽しいぞ! な、みんな!」 「もちろん!」とゆらが満面の笑みで答えた。その他の部員も頷いた。 「さて、花火大会の時間までもうすぐだから移動しようか。はぐれないようにしっかり付いて来るんだよ」 「オレ、一番最後! あらた、はぐれないように手つないどけ!」 「何で手なんか! 大丈夫ですよ」 「それいいね。その方が安心だし。ほら、ゆら」広海がゆらに手を差し出した。 「はい」少し恥ずかしそうに広海と手をつないだ。そして、 「ほらっ、あらた!」  あらたに左手を差し出した。あらたはゆらの笑顔に押し負け、恐る恐る手を握った。 「僕はこいつの腕掴んでおきます」しげがあらたの左腕を掴んだ。じゃ、オレも!とみずきもしげの左腕を掴んだ。 「ははは! 何だか懐かしいね。広海! 先生に掴まっておきな!」  須田が広海に手を差し出した。広海は少し笑ってからその手を掴んだ。 「よーし! それじゃ、地図研究部出発!」  須田の声でみんなが歩き出し、それぞれが楽しそうに、照れくさそうにしながらも、互いの手を放すことは無かった。  祭り会場から少し歩き、花火大会の会場である河川敷の階段に到着した。 「到着! みんな、ここが先生がお勧めする花火スポットだよ」 「ここですか? でも、みんなあっちに居ますよ」広海が先ほど抜けてきた人込みを指した。 「ふっふっふ。ここはね」  須田はおもむろにカバンから地図を取り出し、ライトで照らした。部員は須田の側に集まり、地図に目をやった。 「私たちが居るのはここ。そして花火が打ち上がるのはここ。つまり、この地図と周りを見て分かることは?」  須田が地図を指さしながら尋ねた。みな地図と周りを見比べ答えを探した。 「あ、そうか。橋だ。橋で見えなくなることがないんだ」しげが答えた。 「そう! その通り、低い位置の花火は見え辛くなることが多いんだ」 「カメラを持っている人が何人も居ますね」 「よく気付いたね、ゆら。ここは花火の写真を撮るのにも良い所なんだよ」  へぇーとみんな感心した声を出した。 「さ、そろそろ花火が上がる時間だ! みんな座って、座って!」
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