祭りと花火

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 間もなく、花火大会が始まった。  色とりどりの花が夏の夜空に咲いていく。花火が上がる度に「わー」「綺麗」と歓声が聞こえ、花火の光で照らされた部員たちの楽しそうな顔を広海は愛おしそうに見ていた。  花火が消える瞬間の光も、火薬が燃える匂いも、ここに居るという感覚も全て愛おしく感じた。この夏の思い出を直接胸に刻むかのように、花火の音が心臓に響いた。  花火大会も終わりを迎え、花火を見に来ていた人々もみな立ち去っていく。人で溢れていた河川敷はいつもの静けさを取り戻そうとしていた。 「よし! 今日の部活はもう終わりだな! 帰ろう!」  みんなで帰路につく中、広海は花火が上がった夜空を見上げた。その目は寂しさを含んでいた。 (今年はこのメンバーで見ることができたよ)  そう心の中で見えぬ誰かに伝えた。
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