天体観測

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「さーあ到着だ!」  須田が屋上のドアの鍵を開けた。屋上に出て見上げると満天の星が輝いていた。ゆらとしげは、先ほどまで抱いていた恐怖や不安はどこかに消えてしまっていた。 「ちょっとした肝試しも楽しめたけれど、これからが今日のメインだからね!」 「はい!」 「よーし! それじゃ、これを使って準備しようか。暗闇に目を慣れさせないといけないからね」  須田が赤いセロハンを張ったライトを部員に手渡した。床にレジャーシートを敷き、その上にマットを重ねた。星座早見ばんと双眼鏡をカバンから取り出し、天体望遠鏡を設置した。 「さ、予習したことは覚えているかな? 南はどっちかな?」  部員は方位磁石をライトで照らして方角を確認して南に体を向けた。 「そう、そうしたら星座早見ばんで今日の日にちと時間に合わせよう」  みずきとしげ、ゆらとあらた、広海と須田がペアになって合わせ、早見ばんと空を見比べた。 「まずは、夏の代表の星座の一つ、はくちょう座を探してみようか。十字の形に星が並んでいるよ」 「あった!」 「はくちょう座のお尻のところにあるのがデネブ。そこから時計回りにこと座のベガ。わし座のアルタイル。この一等星を三つをつなげたものを何と言うかな?」 「夏の大三角です」 「そう、キラキラと輝いている星を恒星と言って、自ら燃えて輝いているんだよ。私たちの身近で燃えている星は分かるかな?」 「太陽だ!」 「そう、太陽も燃えて輝いているね。じゃあ、反対に燃えていない星は何と言うかな?」 「惑星」答えたあらたが静かに続けた。 「惑星は太陽の光を反射しているだけ。太陽系なら、水星、金星、地球、火星、木星、土星、天王星、海王星。そしてその周りを公転しているのが衛星。月は地球の衛星」 「よく知っているね、あらた」須田が感心したようにあらたを見た。 「うん! すげーよ!」みずきが身を乗り出してきた。 「親が好きなんで、小さい頃から覚えました」 「小さい頃からこうやって星を見てきたのか?」 「まぁ、はい」 「そうなんだ! あらたのことまた一つ知ることができたね」ゆらがにっこりと笑った。 「そうだな! こうやって星を見に来なかったら、あらたの凄いとこ知らないままだった。他には星について何か知ってること教えてくれよ!」 「それじゃあ、あらたにガイドをしてもらおうかな! よろしくね!」須田がぐっと親指を立てた。
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