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「え、でも」
「あらた。教えて」しげがじっとあらたを見た。しげの目と皆の期待がこもった表情にふうと一つ息を吐き、あらたは空を指した。
「はくちょう座の十字に沿って下に視線をずらすと、さそり座がある。これも夏の星座の代表。S字の形に星が並んでいて、さそりの心臓にあたる場所にある赤っぽく見える星はアンタレス。恒星。アンタレスはその色が火星に似ていることから、火星に似たものという意味がある。大きさは太陽の700倍以上と言われている」
「700倍!?」広海の声が裏返った。
「はい。そして赤く見えるのは、温度が下がり燃え尽きて消えてしまうから」
「消えちゃうの?」
「はい。いつか消えてなくなります」
「そんな。こんなに綺麗なのに」
ゆらの寂しげな声にあらたはどう答えていいか分からず頭を掻いた。
「そうだね。消えてしまうのは寂しいことだね。どの恒星もいつかは燃え尽きてしまうんだ。いつかは消えてしまう星でも、そこに星があったということを私たちが覚えていればいいんだ。そうやって、星も人も歴史も伝えられていくんだよ」
須田が両手を広げて空を見上げた。部員も同じように空を見上げて輝くアンタレスの姿を記憶に刻んだ。
「オレたちが覚えていればいい」
「星も人も歴史も」みずきと広海は自分の心に訴えるように呟いた。
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