天体観測

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「よし、ここから先生にバトンタッチ! あらた、ありがとう。みんな、北の空も見てみようか。北の空に見える代表的な七つの星、これは分かるかな?」 「北斗七星」 「そう、北斗七星。これはおおぐま座と言って、尻尾からからだにかけて柄杓の形をしている。柄杓の柄から数えて6番目と7番目の星の間隔を5倍伸ばすと、そこに輝く星がある。その星は何か知っているかな?」 「北極星です」 「うん、その通り。北極星はこぐま座の尻尾にあたる二等星の星だ。そして、その北極星はポラリスとも呼ばれていて、北の目印としての役割があるんだ」 「目印?」 「北極星は必ず北にあって、ほとんど動くことが無いんだ。だから夜、方角が分からなくなった時、北極星を探すと北の方角が分かるんだよ」 「へぇー、地図と同じだ! 目印があると迷わないもんな!」 「そうだね。昔の人や船乗り、渡り鳥たちは夜の星や太陽の位置を地図代わりにして、今自分はどこに居るのか、どの方向へ進むのか知っていたんだ。特に、北極星は変わらず北に輝き続けている。私たちの目印だ」  みんな北極星を見上げた。そして須田が部員に向き直った。 「先生にとっての特別な北極星は君たちだ」 「オレたち?」 「うん。君たちが居るから私は迷わない。たとえ君たちが卒業しても、いつまでも先生でいられるんだ」 「いつまでも?」 「そう、いつまでも君たちは私の大事な生徒だ」  須田はにっこりと笑い、部員一人ひとりの顔を見た。 「君たちにも見つかるよ。自分の特別な北極星。これがあれば迷わないでいられる大事なものが」 「俺たちにも見つかるといいな」 「きっと見つかる。気が付いていないだけで、すぐそばにあることだってある。見つけることができたのなら、それはきっと宝物になるよ」 「そっか、そっかぁ!」
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