天体観測

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 その後は双眼鏡や天体望遠鏡を使って星の観測をしたり、星座早見ばんと空の星座を見比べた。時々あらたが解説をしてそれを真剣に聴いた。一通り観測を終えて、みんなで屋上に寝転がって夜空を見ていた。 「俺、この人数で星空を見るの初めてです」ぽつりとあらたが呟いた。 「いい思い出になるね!」 「本当にそうですね。あらたの一面を知ることができましたし」 「こうやって一緒に色々なことをすることで、その人の良さや意外な一面に気付くことができる。とても大切なことだ」  広海の言葉にあらたは思い出していた。屋上に着いて空を見上げた瞬間のみんなの輝いた表情。純粋にはしゃいで質問してくるみずき。夢中になって天体望遠鏡を覗くしげと一緒に笑うゆら。北極星を見上げて少し遠い目をしている広海。一歩引いてみんなを見守る須田。そして、初めは嫌々参加していた部活動が楽しいと感じている自分自身。悪くない、そう思った。 「星空がよく見える場所の地図作ってみようかな」 「それいいね」 「どこでよく見えるのか分かったら、夜空を見上げるのが楽しくなるな!」 「あらたの地図、楽しみだね」 「俺、この夏、みんなで一緒に祭りに行ったこと、花火を見たこと、星を見たこと絶対に忘れない」広海が強い意志を込めて誓うように言った。 「オレもだ」 「僕もです」  みずきとしげが強く頷いた。ゆらとあらたと須田は三人の言葉を静かに聞いていた。そして再び全員が夏の夜空を見上げた。
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