問い

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 あらたが部室に入ると、部員が須田の教えのもとで勉強会をしていた。 「遅くなりました」 「委員会お疲れさま。あれ、ゆらは?」 「忘れ物したらしいです。後で来ますよ」 「お前いつも以上にムスッとしてんなー。何かあったのか?」 「いや、ちょっとゆらさんが」 「ゆらがどうかしたの?」  みんなが心配そうな表情であらたに注目した。 「委員会で、ゆらさん、面倒な役を押し付けられちゃって。それでもへらへら笑ってるんですよ。きっと内心では嫌だって思ってる。それなのに、いっつも笑って、黙って、押し殺して、馬鹿みたいだ。それに、どうして笑ってるのか訊いたけど、答えてはくれませんでした」  あらたは良いように使われるゆらとそれに甘える周りの生徒に苛ついていた。部員は目を伏せて口をきゅっと閉じた。すると須田があらたに歩み寄った。 「そうだね。馬鹿、愚かと言ってしまったら言葉が悪いけれど、知らないだけなんだよ。誰かに頼るということ、甘え方がね。ゆらはとても優しい子だよ。そしてとても弱くて、強い子だ。私はそんなゆらが大好きだよ。ゆらが自分の言葉を発せられるように、少しずつでいいから自分の気持ちを話せるようになれたらいいと思ってる。ここで、みんなと一緒に居ることで、何かが変われば良いと思ってる。何より、ゆらの笑顔は天下一品! でしょ?」 「馬鹿は言い過ぎました。先生の言う通り、とても優しい人だと思います。嫌いではないです」 「うん、俺たちもゆらの笑顔が好きだよ」 「あぁ」みずきも同意してにひっと笑った。 「あらた、お前のことだから、ゆらさんに余計なこと言ったんだろ。それに同じ委員なんだから、ゆらさんを手伝えばいいんじゃないのか? いつもお世話になってるんだし、ど?」 「え、そんなこと言われても」  みんなにこにことあらたを見つめた。あらたは眉間に皺を寄せて渋い顔をした。
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