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その時、ガララと部室のドアが開いた。あらたが振り返ると、ゆらが不思議そうな表情で立っていた。
「みんなどうしたの?」
「いや、その」
「あらた」言うことあるだろ、としげが目で訴えた。
「ゆらさん、さっきは困らせてすみませんでした」
「え? あ、いいの! あらたが謝ることじゃないから。私こそごめんなさい。逃げるようなことしちゃって」キョトンとした表情がいつもの笑顔に変わった。そして、ふっと笑いが消え、あらたの目を見た。
「さっきの質問の答えはもう少し待ってね」
「はい。あの、委員会の仕事俺も手伝います」
「そんなーいいのに」
「ゆら、あらたがやりたいって言ってんだ。人手はいくらあっても困らないだろ?」
みずきの言葉にゆらは小さく頷いた。
「それじゃ、お願いしちゃおうかな」
「はい」
「今日は勉強会ですもんね! みなさんどこまで進んだんですか?」
「うん、説明するから荷物置いておいで」笑顔のゆらに広海も笑顔で返した。
荷物を置いているゆらに須田が近づき、
「ゆら、無理しないで、ゆっくりでいいから、ね?」優しく囁いた。
ゆらはハッとしてはいと小さく返事をした。
「そうだ! 思い出した! 四つ葉、そろそろ栞にできるんじゃないか?」みずきが立ち上がった。
「そうだね! 勉強会は一旦休憩して、栞を作ろうか。しげもあらたも楽しみにしていたよね」
「はい!」しげの顔がぱっと明るくなった。
「栞作りはゆらがとても上手でね、デザインも素敵なんだよ。二人ともゆらにアドバイスをもらったらいいよ。ゆら、準備手伝ってくれるかな?」
「はい!」ゆらは部員と須田の温かさにほっとした。
わいわいと楽しく栞作りが始まった。しげはゆらのアドバイス通り綺麗な栞を作り、不器用なあらたは不格好な栞を作った。ゆらから四つ葉をもらった広海も可愛らしい栞を作った。
「しげは器用だなーセンスも光ってるぜ!」
「あらたも頑張ったね。味があるって言うのかな、良いと思うよ」
「気を遣わなくてもいいですよ。部長のは随分可愛いですね」
「あぁ、うん。姉にあげようと思って。良いのができたよ。ありがとう、ゆら」
「ありがとうございます」しげとあらたもゆらに頭を下げた。
「うん!」
ゆらは笑った。みんなに感謝の気持ちを込めて、精一杯の笑顔で。
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