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ゆらが恐る恐るドアを開けた。
「ゆら、どうした?」
「みずきさんが部室に来ないので、どうしたのかなと思って」
「迎えに来てくれたのか? 悪いな」
みずきはカバンを手に持ちゆらのもとに来た。ゆらはみずきの違う雰囲気に戸惑っていた。まともに顔を見れず、緊張して体が硬くなっていた。みずきがゆらの顔を覗き込んで、
「大丈夫か? 心配かけたな」
その目の真剣さと大人っぽさにゆらはどう答えたらいいのか分からなかった。するとみずきは、にかっといつものように笑った。
「ほら、早く行こうぜ」
先に歩き出したみずきの背をゆらは慌てて追いかけた。
みずきと広海は時々、普段と違う顔をする。いつも見せる幼さや無邪気さが消え、大人の雰囲気を漂わせる。その時は決まって、一人で考え込んでいて寂しげな表情をしている。その姿を見たゆらは二人を遠い存在のように感じる。自分には踏み込めない領域があって、他人を寄せ付けない空気に後ずさりしてしまう。二人がそんな顔をする理由も分からないままでいた。
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