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 一人分だけ拓かれた山道。須田を先頭に広海、しげ、ゆら、あらた、みずきの順に一列になって歩く。校舎の裏からこの山に入って10分。見えるのは同じ風景。木と草である。あらたは後ろを歩くみずきを振り返り、 「あの、俺たちどこに向かってるんですか?」 「秘密の場所」あらたの問いにみずきはにいっと歯を見せた。 「は?」  何言ってるんだ。秘密の場所なんて馬鹿げてる。どうして俺はこんなことに。そもそも断っておけば。あらたが下を向いて悶々と考えていると、 「着いたよ!」須田の声が聞こえた。  顔を上げると、そこは広く拓かれていて中央に大きな桜の木が立っていた。その桜の花は満開で、まるで青い空に浮かんでいるようだった。あらたは言葉を失った。しげも同じく感動して言葉もなく、並んで桜に見入っていた。須田をはじめ広海、みずき、ゆらはそんな二人を桜の側で優しく見守っていた。 「なぁ、清水」 「何?」 「綺麗だな」 「あぁ、秘密の場所なんだって」 「そうだな。こんな場所あるなんてな」 「おーい二人とも! こっち来てお花見するよ!」自分たちを呼ぶ広海の声に二人は顔を見合わせ、みんなのもとに走った。 「まずは、桜の木に挨拶をしよう。みんな桜の木に手を当てて」  須田に倣って広海、みずき、ゆらが桜の幹に手を当てた。しげとあらたも同じように桜の幹に手を当てた。すると手のひらに温かさを感じた。 「お花見させていただきます。今年も美しい花をありがとうございます」  須田が桜の木に話しかけるのを部員は黙って聞いていた。桜の木も須田の話を聞き、部員たちの手を感じ取っているようだった。
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