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「さてと! 始めようか!」
須田がぱっと木から離れてレジャーシートを開き始めた。広海とみずきが持っていた袋からは飲み物、ゆらが持っていた袋からはお菓子が出てきた。みんな慣れた手つきで準備を進め、しげは飲み物を受け取って楽しそうに輪の中に入って行った。あらたは戸惑った表情で立ちすくんでいた。
「あらた、こっちおいで」
ゆらが自分の隣にあらたを座らせた。飲み物を渡し、にこにこと笑うゆらにあらたは照れくさそうに目をそらした。
「よっしゃ! 乾杯するぞ!」みずきが勢いよく立ち上がった。
「今年は新しい部員が二人も入った!」
「えっ、俺は」
「この最強メンバーで、今まで以上にさいっこうの部活動と思い出を作っていこうぜ! かんぱーい!」
「乾杯!」あらたを除く全員が一斉に声を上げてわいわいと楽しそうに話し始めた。あらたはあっけにとられて飲み物を手に持ったまま硬直していた。
「あらたよろしくな!」
「よろしく!」みずきと広海があらたに笑いかけた。
「秘密の場所って言ったろ?ここは地図研究部しか来れない秘密の場所だ。ってことはお前はもう部員だ」
「是非、あらたに見て欲しかった。この桜を」
「はぁー。はめられた」あらたは大きくため息をついて空を仰いだ。
「きっと楽しいから、ね?」
「細かいこと気にすんなよ、あらた」ゆらとしげもあらたを囲んでいた。
「お前、佐藤」
「しげでいい。もう仲間だ」
部員たちの言葉や表情にむず痒さを覚えながらもあらたは輪の中に入っていた。
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