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納得したようなしていないような。
そんな気持ちだった。答えを見つけるために、ファインダーを覗き込んでみた。
シャッターチャンスを待つ彼女が枠に納まって見える。あまりに熱心で、カメラに吸い込まれるのではないかと思った。
カメラ越しに見るシャッターチャンスを待つ彼女は、やっぱり綺麗だ。そのままカメラに吸い込まれそうな彼女を引き留めたい。そんな一心でシャッターをきった。
パシャッ
「よし。俺も一瞬、撮った」
「はぁ?」
「一瞬を待つ君の一瞬。どう?」
「君、やる気あるの?」
一時間以上も巣箱を見ていた彼女が、初めて俺を見た瞬間に、またシャッターを切った。
今度は、連写機能で。
カメラのデジタル画面を見て満足する。
「うん、写真芸術が分かってきたな」
「馬鹿じゃないの」
「好きな子の一瞬を貰えるんだ、馬鹿でも良いかな」
シャッターチャンスを待っていた彼女の顔が、どんどん赤くなった。
赤い顔を隠すように彼女は、巣箱にカメラを構えた。
「あっ! 今、シャッターチャンスだったのに」
「私はもう良いから!」
照れて必死になっている彼女を見ると、俺の隣に引き留めれた気になった。
今の俺の奥をどんなに覗いても、彼女しかいないだろう。もう一度、ファインダー越しに彼女を見て、さらなるシャッターチャンスを待った。俺も写真部の一員だ。いくらでも待ってやる。
それが、俺が写真にハマったキッカケ。
この時に撮った写真が、まさか、入賞するなんて、俺も彼女も思っていなかったから、写真芸術とは面白いものだ。
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