入賞;僕の好きな一瞬

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変わっているなんて言われたが、彼女も大概だと思う。 だって、女だてらに木に登り、誰が設置したのか分からない巣箱に張り付いているのだ。いくらコンテスト作品のためとはいえ、そこまでするかと、言いたくなる。 しかし、カメラを構えた彼女は綺麗なのだ。文句のつけようのないくらい。カメラを構えた彼女を見たその日、直ぐに写真部へ入部したくらい。 入部して直ぐ、彼女とシャッターを切り合えると思っていたが、違った。 カメラの使い方やら、撮り方やらを瓶底メガネ先輩に三日もかけて、教えて貰うことになったしまった。 今日は、瓶底メガネ先輩から解放されて、学校内を探し回り、ようやく彼女を見つけたら、これだ。 曲がりなりにもクラスメートなんだから、写真について教えてくれてもいいのに。そう思うところもあり、また、被写体にしか興味がない彼女にも惹かれる。男の乙女心というやつだ。 「カメラを構えたまま、一時間もシャッターを切らない君の方が、変わりもんだと思うけど……。写真部って、もっとバシャバシャ撮るもんじゃないの?」 「撮るよ、一日1000枚くらい」 彼女は、一瞬たりとも俺を見ないで答えた。 その答えは、俺の想像を優に超えていた。 「1000枚?!」 「シャッターチャンスが来たらね。連写機能つけてるとすぐだよ」 「ふーん。そんなもんなんだ。もっとインスピレーションで撮るのかと思ってたんだけど、ちがうんだな」
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