『3、日々の研究・分析』

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『3、日々の研究・分析』

……ピピピッ、ピピピッ 「……ぁああ」 早朝に鳴り出す控えめなアラーム音で俺は目を醒ます。 カーテンもかかっていないベランダの窓からは、容赦なく朝日が降りこみ、俺の体をくすぐる。心地よい温度と粛然たる五月の朝が俺をまたもや夢の中に誘うが、なんとか無理矢理上半身を叩き起こす。 「………………あー、つらい」 高校生が寝ぼけまなこで朝目を覚ます、というのは至極自然だ。 しかし、自分の通う学校が、徒歩15分圏内に位置しているのというのに、五時に起きなければならないのはどう考えてもおかしいんじゃないだろうか。 五時なんて体感ではまだ夜である。当然目覚ましも控えめになる。 目をしばたかせながら洗面所に立つと、そこにはいつも通りしみったれた顔をした自分が映っていた。 「今日は……フィットネスクラブ」 その日の予定を確認しながら、右手でスマホを操り、左手で歯を磨く姿はまるで仕事がデキる社会人だが、実際は自給900円で朝からティッシュを配るただの貧乏高校生だ。 ホント貧乏、ただただ貧乏。可哀想なくらい貧乏だし、兎にも角にも金がない。どれだけ無いかって言うと、残高も朝ごはんも夢も希望もないどころかこれ以上は言葉も出ない。 ブツブツと悪態をつきながら出発の準備を進める。バイトが終わったらそのまま学校に向かうからカバンをちゃんと持っていかなければ。 「……はぁ、行ってきます」 誰もいない部屋に覇気のない俺の声がむなしく響く。一人暮らしなので当然返答はない。 ちなみに言っておくが、行きたくはない。出来ることなら今からでも二度寝したい。サボりたい。朝から活動するだけの栄養分は蓄えてないよ?朝食べてないし。 鬱々とする気持ちをどうにかこうにか一歩目を踏み出すエネルギーに換え、外に出ようとするとき、ふと玄関の蛍光灯が目に入る。 ボヤッと『0』という数字が浮き出ていた。価値が『0』。切れちゃったか。帰りに買わなきゃ。 また余計な出費に頭を抱えながらも俺は今日もお金を稼ぐ。 金さえあれば幸せに二度寝出来たのに!
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