(〇四)

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 時間的にゼロ係が、この周辺の聞き込みを始めるまで、まだ二時間はあるだろうと計算していたが、それでも鉢合わせしないとも限らないので、綾部は手早く済ますことにした。  店のドアノブに手をやって引いてみると、ドアが開いた。  中に足を踏み入れた綾部は、わりと広いフロアを掃除している、数人の様々な美形のホストを目にした。 「ちょっとええかな?」  綾部に声をかけられたホストたちは、一同に彼を見た。  そのうち、一番背の高いホストが、代表するように、 「あんた、誰?」  と、言った。  警察バッジのバッジ部分だけを素早く見せて、 「内密な捜査で、ちょっとした人探しや…リョーマちゅう奴はおるか?」  と、訊いた。  リョーマとは、綾部が奈良崎と話をしている時に、たまに出て来る名前で、奈良崎が同じクラブで働くホスト仲間の名前で、出るのは彼だけだった。 「リョーマならまだ来てませんが…あいつ、なんぞしましたんやろか?」 「人探しや言うたやろ。リョーマには直接関係あらへんから安心せえ…で、今の時間は家か?」  ホストは掃除をしている連中を見て、 「おい! リョーマの奴、今頃の時間やったら、どこにいるかわかるか?」  と、怒鳴るように訊いた。  すると一人が、 「あいつ、今の時間やったら、難波でパチンコしとるんとちゃいます?」  と、言った。  綾部は、 「その店、わかるか? あと、携帯番号と住所も教えてくれ」  と、前半は声の主に訊き、後半は話し相手のホストに言った。  訊きたいことを訊いた綾部は店を出る間際に、 「今日の夕方か夜に、もう一度、警察が来よると思うけどな、質問には答えても、俺のことは言うなや…こっちは内密な捜査やさかいな」  と、言い残して行くのだった。
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