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時間的にゼロ係が、この周辺の聞き込みを始めるまで、まだ二時間はあるだろうと計算していたが、それでも鉢合わせしないとも限らないので、綾部は手早く済ますことにした。
店のドアノブに手をやって引いてみると、ドアが開いた。
中に足を踏み入れた綾部は、わりと広いフロアを掃除している、数人の様々な美形のホストを目にした。
「ちょっとええかな?」
綾部に声をかけられたホストたちは、一同に彼を見た。
そのうち、一番背の高いホストが、代表するように、
「あんた、誰?」
と、言った。
警察バッジのバッジ部分だけを素早く見せて、
「内密な捜査で、ちょっとした人探しや…リョーマちゅう奴はおるか?」
と、訊いた。
リョーマとは、綾部が奈良崎と話をしている時に、たまに出て来る名前で、奈良崎が同じクラブで働くホスト仲間の名前で、出るのは彼だけだった。
「リョーマならまだ来てませんが…あいつ、なんぞしましたんやろか?」
「人探しや言うたやろ。リョーマには直接関係あらへんから安心せえ…で、今の時間は家か?」
ホストは掃除をしている連中を見て、
「おい! リョーマの奴、今頃の時間やったら、どこにいるかわかるか?」
と、怒鳴るように訊いた。
すると一人が、
「あいつ、今の時間やったら、難波でパチンコしとるんとちゃいます?」
と、言った。
綾部は、
「その店、わかるか? あと、携帯番号と住所も教えてくれ」
と、前半は声の主に訊き、後半は話し相手のホストに言った。
訊きたいことを訊いた綾部は店を出る間際に、
「今日の夕方か夜に、もう一度、警察が来よると思うけどな、質問には答えても、俺のことは言うなや…こっちは内密な捜査やさかいな」
と、言い残して行くのだった。
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