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寝室のベッドが軋み、二人の全裸の男が絡み合っていた。
やがて二人の男…上になっている綾部がフィニッシュを迎えると、下の奈良崎も同時にフィニッシュを迎えた。
十日ぶりの逢瀬だった。
俯せになり、汗ばんだ背中を見せて呼吸をしている奈良崎を横目に、綾部は煙草に火をつけた。
綾部が奈良崎と関係を持ち、もう半年と少しになる。
綾部には元々、男色の趣味はなかった。
遊び人ではないが、むしろ、女性との交遊関係の方が広く、時には男女のトラブルに発展しかけた時もあったぐらいだ。
しかし、奈良崎と出逢い、綾部の中で何かが変わった。
出逢いは些細なことだった。
勤務を終えて夜遅くなった綾部は、翌日が非番だったので、ミナミのバーに飲みに行った。
そして、福島区にある自宅マンションへ帰るためタクシーに乗り、なにわ筋を走っていた綾部は、北堀江辺りの側道で倒れている奈良崎を見つけた。
綾部は慌ててタクシーを停めると、車内から出て奈良崎に近付き、彼から発する甘い香水とアルコールの匂いに辟易しながら、軽く肩を揺すった。
「おい、大丈夫か?」
奈良崎は小さく艶っぽい唸り声を出すと、薄目で綾部を見た。
この時の奈良崎は仕事帰りなのか、高級そうな濃紺のスーツを着ていたが、ネクタイは緩み、スーツは所々薄汚れていた。
「家はどこや? 家族は?」
綾部の問いにも奈良崎は唸るだけだった。
相当、飲んだようである。
「失礼するで」
綾部はそう声をかけると、スーツのポケットを探り、財布を見つけると、その中から免許証を抜き取った。
住所は西区新町とあった。
この近くらしい。
綾部はタクシー運転手に、自分は警察だと告げたあと、手を貸してもらい奈良崎を車内に乗せ、免許証の住所に行くように指示した。
そして、奈良崎の住むマンションに着いた綾部はタクシーを帰し、道中、彼の部屋の鍵を見つけ出していたので、彼を部屋に運び込み、ベッドに寝かせた。
一仕事終えて帰ろうと、奈良崎の横に座り込んでいた綾部が立ち上がりかけた時、突然、奈良崎が綾部の片腕を掴んで起き上がり、漆黒の瞳で彼を見つめた。
奈良崎に見つめられた綾部自身、アルコールも入っていたこともあったからなのか、奈良崎の官能的な唇の動きで、
「ここにいて…」
と、言われた瞬間、何かが弾けた。
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