(〇一)

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 寝室のベッドが軋み、二人の全裸の男が絡み合っていた。  やがて二人の男…上になっている綾部がフィニッシュを迎えると、下の奈良崎も同時にフィニッシュを迎えた。  十日ぶりの逢瀬だった。  俯せになり、汗ばんだ背中を見せて呼吸をしている奈良崎を横目に、綾部は煙草に火をつけた。  綾部が奈良崎と関係を持ち、もう半年と少しになる。  綾部には元々、男色の趣味はなかった。  遊び人ではないが、むしろ、女性との交遊関係の方が広く、時には男女のトラブルに発展しかけた時もあったぐらいだ。  しかし、奈良崎と出逢い、綾部の中で何かが変わった。  出逢いは些細なことだった。  勤務を終えて夜遅くなった綾部は、翌日が非番だったので、ミナミのバーに飲みに行った。  そして、福島区にある自宅マンションへ帰るためタクシーに乗り、なにわ筋を走っていた綾部は、北堀江辺りの側道で倒れている奈良崎を見つけた。  綾部は慌ててタクシーを停めると、車内から出て奈良崎に近付き、彼から発する甘い香水とアルコールの匂いに辟易しながら、軽く肩を揺すった。 「おい、大丈夫か?」  奈良崎は小さく艶っぽい唸り声を出すと、薄目で綾部を見た。  この時の奈良崎は仕事帰りなのか、高級そうな濃紺のスーツを着ていたが、ネクタイは緩み、スーツは所々薄汚れていた。 「家はどこや? 家族は?」  綾部の問いにも奈良崎は唸るだけだった。  相当、飲んだようである。 「失礼するで」  綾部はそう声をかけると、スーツのポケットを探り、財布を見つけると、その中から免許証を抜き取った。  住所は西区新町とあった。  この近くらしい。  綾部はタクシー運転手に、自分は警察だと告げたあと、手を貸してもらい奈良崎を車内に乗せ、免許証の住所に行くように指示した。  そして、奈良崎の住むマンションに着いた綾部はタクシーを帰し、道中、彼の部屋の鍵を見つけ出していたので、彼を部屋に運び込み、ベッドに寝かせた。  一仕事終えて帰ろうと、奈良崎の横に座り込んでいた綾部が立ち上がりかけた時、突然、奈良崎が綾部の片腕を掴んで起き上がり、漆黒の瞳で彼を見つめた。  奈良崎に見つめられた綾部自身、アルコールも入っていたこともあったからなのか、奈良崎の官能的な唇の動きで、 「ここにいて…」  と、言われた瞬間、何かが弾けた。
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