マラソン大会

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マラソン大会

「私さ、走るの遅いから一緒に走ろうね」 「私も、長い距離、一人で走るの苦手なの」 「よかったー。ビリになっても二人ならこわくないもんね」 「そうだよね」 「じゃぁ、約束だよ」 「うん、約束」  いよいよマラソン大会当日。 「あードキドキして昨日眠れなかったよ」 「私も眠れなかった」 「でも、一緒に走るから少し安心だね」 「そうだね」 「ねぇ、はぐれないように手をつなごうか」 「うん。そうしよう」  二人は手をつないで、スタートを待った。  私たちは、待っている間からすでに手をつないでいた。  お互いに緊張のせいか手は湿っていた。  ついに私たちが走る時がきた。 「いよいよだね」 「うん。いよいよ」 「よーい」 「パーン」  勢いよくピストルの音が鳴る。  ついにスタートした。  これから長く辛い孤独なたたかいが始まる。  でも独りじゃないから安心だ。  そんなのんきな気分でいたのもつかの間。  私は、いつの間にか独りになっていたのだ。  さっきまで手をつないでいたあの子はどこへ。  あれだけ一緒に走ろうねと言ったあの子はどうしたんだろう。  まだ最初だから少しぐらいとばしてもよいかな。     
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