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ちょっとだけスピードアップしたその先にあの子の姿をようやく見つけた。
追いつけそうで追いつけない距離。
でも私は何とかあの子に近づきたくて、必死に走った。
やっと追いついて話しかけようとしたら、今度は別の子と手をつないでいた。
なんだ、私じゃなくても誰でもよかったんだ。
私は、違ったのに。
そっか、なんだ、やっぱり私は独りなんだ。
そんな事を考えていたら突然視界が真っ暗になった。
足が痛い。どうやら派手に転んだようだ。
もう走るのどうでもよくなっちゃった。
よろよろ歩きながら私はどんどん抜かされた。
もうビリでもいいや。
あの子に裏切られ、転んですりむいたところも痛い。
「ねぇ、大丈夫?」後ろから声をかけられた。
「よかったら、一緒に走らない?」
私は、やっぱり独りじゃなかったんだ。
「ありがとう」
そして私は、無事にゴールまで走り抜いた。
「本当に一緒に走ってくれてありがとう」
「別に気にしなくていいよ。それよりも転んだ所の傷大丈夫?」
「大丈夫だよ」と言いながらも私は泣いていたので、心配そうな顔をしたあの子の困った顔が今でも忘れない。
後日、一緒に走ろうと言った子が私に話しかけて来た。
「ごめんね。一緒に走ろうと言ったのに先に行ってしまって」
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