毅土力

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運命の相手と思った事は、これが初めてでは無い。離別を告げられた彼にも、それ以前の相手にも、ミツは運命を感じて来た。フラれても、次の相手に"これこそ運命"と信じて止まなかった。 (運命だから運命なのよ。今度こそ本物の運命に違い無い。そうに決まってる!) ミツが、そう思いたいだけ。舞い上がって居るとも言えなくは無いが、そう思いたいから、そう思う事にする。 (自分で掴むものなら、今度こそ、掴んで離さなければ良いのよ――頑張って、アタシ!) 失恋に続き、死体遺棄なんて犯罪を犯した癖に、自分で自分を応援するなんてと笑えて来た。やはり、こんな自分は彼には不釣り合いだと落ち込んでしまう。 「たっだいまぁ~♪」 頭の上に石が乗ったように沈み始めたところに、彼が戻って来た。上機嫌なところを見ると、母親の説得は上手く行ったのだろう。 「お帰りなさい」 「いひ、俺の帰り待っとる子がおるんって良ぇなぁ」 (胸キュン!) 「帰しとう無くなる」と、彼が空中に文字を書く。ネオンサインのような光りの文字はミツと書かれており、彼がその名前をハートで囲んだ。 「みっつんの好きにしたら良ぇんやで。オカンは説得したさかい、帰るんやったら送ったる」 迷って居る。帰るべきか、残るべきか。 (貴方は、どうしたいの?) 聞きたかったのに、言葉に出来無かった。帰れ、と言われるのが怖かったからだ。 「みっつんは、どうしたいん?」 「アタシは……」 ――運命は、自分で掴むもの。掴んだら、離さない事。 「も、もう少し……居たいかなっ」 「グッと来るやんアカンそれ狡いわぁぁ~っっ……ごっつきゃわゆい!」 飛び込むように、彼がミツの隣に座った。その勢いは、ソファーが少し傾くくらいだった。
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